脊髄損傷
始めに
脊髄とは、脳と、手や足などの体の末端をつなぐ神経の束で、背骨の中を通っています。
脊髄損傷とは、小脳から腰椎(ようつい)に伸びている中枢神経である脊髄(せきずい)が、労災事故で生じた衝撃によって損傷することで、症状としては損傷された脊髄から手足の指先の部分において運動・知覚に障害が現れます。
外傷などにより脊髄が損傷され、対麻痺や四肢麻痺が生じた場合には、広範囲にわたる感覚障害や尿路障害などの腹部臓器の障害が通常認められます。さらには、脊柱の変形や運動障害が認められることが多いです。
完全麻痺・不完全麻痺
脊髄損傷には、完全麻痺ならびに不完全麻痺があります。
完全麻痺は、下肢がまったく動かず感覚もなくなった状態のことです。
肛門括約筋を自分で締めることができない状態です。
しかし、全く何も感じないわけではありません。
受傷した部分から下の麻痺した部分にかけて、痛みを感じることもあります。
頚椎を損傷した場合には、四肢全てが動かないという状態になります。
不完全麻痺とは、脊髄の一部が損傷して一部が麻痺をしている状態のことです。
肛門括約筋を自分で締めることができる状態です。
ある程度運動機能が残っている軽症から感覚知覚機能だけ残った重症なものもあります。
どちらの場合であれ、脊髄は一度傷つくと二度と元に戻らないものです。
脊髄損傷の場合、運動麻痺、知覚麻痺、排尿障害、排便障害、自律神経症状などの症状が発生し、労災事故後の生活に支障を生じることは明らかです。
そこで、その後の生活を安定させるためには、適切な後遺症認定を受け、しっかりとした補償を受けることが必要です。
脊髄損傷の後遺障害等級表
1級
「脊髄損傷のため、生命維持に必要な身の回りの処理の動作について常に他人の介護を要する者」
①高度の四肢麻痺が認められるもの
②高度の対麻痺が認められるもの
③中程度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
④中程度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
(例第2腰髄以上で損傷を受けたことにより両下肢の高度の対麻痺、神経因性膀胱障害及び脊髄の損傷部位以下の感覚障害が生じたほか、脊柱の変形等が認められるもの)
2級
「脊髄症状のため、生命維持費に必要な身の回りの処理の動作について、随時介護を要する者」
①中程度の四肢麻痺が認められるもの
②軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
③中程度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
3級
「生命維持に必要な身の回りの処理の動作は可能であるが、脊髄症状のために、労務に服することができないもの」
①軽度の四肢麻痺が認められるもの
②中程度の対麻痺が認められるもの
5級
「脊髄症状のために、極めて軽易な労務のほか服することができないもの」
①軽度の対麻痺が認められるもの
②一下肢に高度の単麻痺が認められるもの
7級
「脊髄症状のため、軽易な労務以外には服することができないもの」
①一下肢に中程度の単麻痺が認められるもの
9級
「通常の労務に服することはできるが、脊髄損傷のため、就労可能な職種の範囲が相当程度に制限されるもの」
①下肢に軽度の単麻痺が認められるもの
12級
通常の労務に服することができるが、脊髄損傷のため、多少の障害を残すもの
①運動性、支持性、巧緻性および速度についての支障がほとんど認めらない程度の軽微な麻痺を残すもの、また、運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの、
②軽微な筋緊張の亢進が認められるもの、
③運動障害を伴わないものの、感覚障害がおおむね一下肢にわたって認められるもの
後遺障害等級認定のポイント
適切な後遺障害の等級認定は、高次CT画像やMRI画像などの画像所見、ならびに、医師が診察して作成した後遺障害診断書や神経学的所見など、必要な資料を整えた上で後遺障害の等級認定を受けなければなりません。
また、後遺障害認定の基準について主治医にきちんと理解していただく必要があります。
労災事故によって脊髄損傷となってしまった方がいらっしゃいましたら、すぐに弁護士にご相談ください。