耳の後遺障害について

耳の後遺障害の分類

労災事故に遭って、耳に後遺障害が残存してしまう場合があります。
大きく分けて耳の後遺障害は、①欠損障害、②聴力障害、③耳鳴りや耳漏といったその他の障害、の3つに分類することができます。
そして、それぞれの障害の内容と程度により、後遺障害等級が認定されます。

 

①欠損障害

耳介の軟骨部の1/2以上を失った場合に、耳介の大部分の欠損として後遺障害等級が認定されます。

 

他方で、耳介の欠損障害については、醜状障害の認定を受ける場合があり、いずれにも該当する場合には、いずれか上位の等級が認定されます。
そのため、耳介軟骨部の1/2以上に達しない欠損であっても、「外貌の単なる醜状」の程度に該当する場合には、外貌醜状として後遺障害等級の認定がなされることになります。

 

耳介の欠損障害については、1耳のみの等級が定められており、両耳の耳介を欠損した場合には、1耳ごとに等級が定められ、併合認定がなされます。

 

②聴力障害

聴力を喪失、あるいは低下したことに関する後遺障害です。聴力障害に関する等級は、純音による聴力レベルと語音による聴力検査結果を基礎として認定がなされます。
両耳の聴力障害については、1耳ごとに等級を定め併合するという方法はなされません。

 

耳介の欠損障害と聴力障害が存在する場合には、それぞれの該当する等級が認定されたうえで併合して認定されることになります。
検査方法も決まっており、検査回数も日を変えて3回行うものとされており、検査と検査の間は7日程度あければ足りるとされています(ただし、語音検査については、検査結果が適正と判断できる場合には1回で良いとされています)。

 

ところが、医師によっては、後遺障害等級認定のための検査方法について詳しくない方もおられ、検査結果の不備によって後遺障害等級の認定がとれないケースもあります。

 

従いまして、検査前の段階ないし検査後においても、検査方法などに不備がないかについて、後遺障害に精通している弁護士の在籍する当事務所にぜひご相談下さい。

 

③その他の障害

欠損障害、機能障害の他にも、耳鳴や耳漏によって難聴を伴う場合があります。
この場合には、手術的処置によって治癒を図り、聴力障害が残る場合には、その程度に応じて後遺障害等級の認定がなされます。

 

聴力障害が障害等級に該当しない程度のものであっても、常時耳漏がある場合や、その他程度内容により、後遺障害等級の認定がなされます。

 

また、外耳道が高度に狭窄した場合にも後遺障害等級の認定がなされることがあります。
その他、内耳の損傷により平行機能障害が生じている場合には、その程度に応じて、神経系統の機能障害として後遺障害等級の認定がなされることがあります。

 

2 耳の後遺障害の認定基準

1)欠損障害

等級  認定基準
12 級 4 号 1 耳の耳殻(耳介)の大部分を欠損したもの

 

2)聴力障害

2-1 両耳の聴力に関するもの

認定基準
4 級 3 号 両耳の聴力を全く失ったもの
(両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上または80dB以上であり、かつ、最高明瞭度が30%以下の場合)
6 級 3 号 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
(両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上または50dB以上80dB未満であり、かつ、最高明瞭度が30%以下の場合)
6 級 4 号 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が 40cm 以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
(1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上または80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上の場合)
7 級 2 号 両耳聴力が 40cm 以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの
(両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上、または両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上あり、かつ、最高明瞭度が50%以下の場合)
7 級 3 号 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が 1m 以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
(1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上の場合の場合)
9 級 7号 両耳の聴力が 1m 以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
(両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上、または両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ最高明瞭度が70%以下の場合)
9 級 8号 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が 1m 以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
(1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上の場合の場合)
10 級 5 号 両耳の聴力が 1m 以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
(両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上、または両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上であり、かつ最高明瞭度が70%以下の場合)
11 級 5 号 両耳の聴力が 1m 以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
(両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上の場合)

 

2-2 片耳の聴力に関するもの

等級       認定基準
9 級 9 号 1 耳の聴力を全く失ったもの
(1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上の場合)
10 級 6 号 1 耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
(1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上90dB未満の場合)
11 級 6 号 1 耳の聴力が 40cm 以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
(1耳の平均純音聴力レベルが70dB以上80dB未満、または1耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下の場合)
14 級 3 号 1 耳の聴力が 1m 以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
(1耳の平均純音聴力レベルが40dB以上70dB未満の場合)

 

3)耳鳴・耳漏

等級         認定基準
12 級相当 30dB 以上の難聴を伴い、著しい耳鳴りを常時残すことが他覚的検査により立証可能なもの
30dB 以上の難聴で、常時耳漏を残すもの
14 級相当 30dB 以上の難聴を伴い、常時耳鳴りを残すもの
30dB 以場の難聴で、耳漏を残すもの

 

耳の後遺障害の等級認定のポイント

一般的に耳鼻科の耳に関する日常の診察は、外耳・中耳・内耳炎の治療などが中心です。

 

しかし、耳の後遺障害の場合、耳ないし耳の周辺に関する外傷が原因ではなく、頭部外傷などにより、聴覚神経が損傷したことによって障害が発生する場合があります。

 

そのため、耳鼻科での診断のみならず、脳神経外科や神経内科で診察を行う必要があるケースもあります。
この事実が十分に把握されない結果、十分な検査がなされず、医師の診断書に記載されないことがあり、後遺障害等級の認定を受けられない場合もあります。

 

また、記載があったとしても、検査項目や検査方法の不備が原因で、後遺障害等級の認定を受けられていないケースもあります。
そのため、当事務所に相談に来られ、検査をやり直し、等級非該当から等級認定になられることもありえます。
耳の後遺障害でお悩みになられている方は、お気軽に当事務所までご相談下さい。

些細なことでもお気軽にご相談ください 024-528-5780 相談受付時間:平日8:30~17:30 佐藤初美法律事務所(福島県弁護士会所属)

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